【現地レポート⑬】ペイントエリアに心を込めて――千葉経済大学附属#5伊藤紗友希
2022年12月26日
目標のベスト 4 にはあと一歩届かなかった。しかし、今年度のチームの特長でもあるインサイドとアウトサイドのバランスの良さは、その目標を堂々と「目標」と言えるほど、全国でも通用するものだった。
「SoftBank ウインターカップ2022 令和 4 年度 第75回全国高等学校バスケットボール選手権大会」の女子・準々決勝。千葉経済大学附属 (千葉①) は札幌山の手 (北海道) と対戦し、76-92 で敗れた。第 3 クォーターの終盤には 5 点差まで詰め寄るシーンもあった。しかし、繰り返しになるが、あと一歩を踏み込むことができずに試合終了のブザーを聞いた。
「第 2 クォーターに勝ちたい意識が強くなりすぎたのか、取るべき得点を取れず、守勢に回ってしまったところが悔やまれます。前半をイーブンで終えて、最後に逃げ切る形にしたかったのですが……力不足でした。それでも選手たちは最後まで諦めずによく頑張ってくれました」
チームを率いて37年目、「日本一熱い監督」と言われる池端直樹コーチは試合をそう振り返る。
個々のスタッツを見ると #4 川井田風寧の30得点が目を引くが、池端コーチは「インサイドの 2 人が攻撃の要」だったと言う。
「アウトサイドがファーストオプションではないほうが攻撃に厚みが生まれると、私は考えています。ゴールの近いところで体を張ってくれるとファウルが起こることもありますし、得点に差がなくても有利に試合を運べることができます。ディフェンスが寄ってくればアウトサイドに出して、次の攻撃に展開できますから」
その考え方を、文字どおり体を張って体現した一人が #5 伊藤紗友希である。身長は173センチだが、体格の良さを生かして、千葉経済大学附属のインサイドを支配し続けた。
「スキルなどを考えると相手のほうが強いと思っていましたが、ひたむきさでも相手に負けてしまいました。自分がもっとしっかりプレーしていれば、結果は変わったんじゃないかと思います」
もっとシュートも狙えたし、リバウンドにも入れたのではないか。そう思うからこそ、やりきったという感触はないと伊藤は悔やむ。
それでも13得点・15リバウンドのダブルダブル。しかも15本のリバウンドのうち、11本がオフェンスリバウンドである。10点以上のビハインドを背負いながら、最後まで池端コーチが掲げる分厚い攻撃で戦うことができたのは、伊藤の存在があればこそだろう。
3 年生の彼女にとって、次の舞台は大学バスケットになるとのこと。
「自分の強みはリバウンドやゴール下でタフにねじ込むことです。その強みを次のステージでも発揮して、チームの勝利に貢献できる選手になりたいと思います」
近年は期待値の高さから 3 ポイントシュートに注目が集まるが、それを生むのも助けるのも体を張れる選手がいてこそである。身長が大きくなくても、コンタクトを厭わず「体を張る」こともまた才能のひとつである。目標を達成することはできなかったが、それがまた彼女をより強くすると信じたい。