ウインターカップ2022 第75回 全国高等学校バスケットボール選手権大会


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【現地レポート⑲ / 男子決勝悲劇を歓喜に変えたルーキーの4発――開志国際、ウインターカップ初優勝!

2022年12月29日

 サッカー日本代表は1993年の「ドーハの悲劇」を29年後の2022年、「ドーハの歓喜」に変えた。歳月も、スポーツも、カテゴリーさえも異なるが、2022年の高校バスケットボール男子もまた、夏の悲劇を冬の歓喜に変えている。

「SoftBank ウインターカップ2022 令和 4 年度 第75回全国高等学校バスケットボール選手権大会」の男子決勝戦。開志国際 (新潟①) が福岡第一 (福岡①) を 88-71 で下して、ウインターカップ初優勝を遂げた。

 両校は夏の高校総体・決勝戦でも対戦している。そのときは 76-77、開志国際がわずか 1 点差で敗れている。しかも試合終了21秒までは彼らが 2 点リードしていた。しかし福岡第一のフルコートディフェンスにボールを奪われると、#17 崎濱秀斗に 3 ポイントシュートを沈められる――残り 5 秒での逆転負けだった。

 開志国際にとって悲劇ともいえる敗北から150日。
 ウインターカップの決勝戦で再び相まみえた両校は、第 1 クォーターこそ福岡第一がリードをして終わるが、第 2 クォーターで開志国際が逆転し一気に突き放すと、後半も大きく崩れることなく初のウインターカップを戴くこととなった。

 福岡第一の井手口孝コーチは試合前、「鍵は 3 番ポジション、4 番ポジションをいかに守れるかだろう」と話していた。開志国際の 3 番ポジションは190センチの #5 武藤俊太朗、4 番ポジションは197センチの #7 介川アンソニー翔である。福岡第一は 2 人の長身者をいかに抑えるかがポイントになると考えたわけである。
 果たしてその懸念は的中した。#5 武藤は20得点・11リバウンド。うち 4 つがオフェンスリバウンド。#7 介川は30得点・8 リバウンド。こちらもうち 4 つがオフェンスリバウンド。福岡第一は高さを生かした開志国際の攻撃を守り切れなかった。
 しかし、勝敗を分けたのは彼らの存在だけでなかった。第 2 クォーターの逆転を呼び込み、その後の勢いをもたらしたのは、4 本の 3 ポイントシュートを沈めた #13 平良宗龍である。

「今大会は 3 ポイントシュートの確率がけっしてよくなかったのですが、1 本目の 3 ポイントシュートを沈められたときに『あ、これ、いけるな』という感じで、そこから (自身として) 4 連続で決められてよかったです」
 確かに今大会の彼の 3 ポイントシュートはけっして精度が高いものではなかった。前日の準決勝でも 9 本中 1 本しか決められていない。この日の第 1 クォーターも 2 本打って、2 本とも外している。それでも彼は打つことをやめず、試合の流れを大きく変える 4 本の 3 ポイントシュートを沈めた。

 そこには富樫秀樹コーチをはじめ、アシスタントコーチや先輩たちの存在も大きかった。外しても、外しても、周りから「打ち続けて、打ち続けて」と声を掛けられたことで、打ち続けることができたのだと彼は認める。
 そうは言っても、まだ 1 年生。いくら「打ち続けて」と言われても、自分のシュートが落ち続けて試合に負ければ、それはすなわち 3 年生たちの引退を意味する。怖れもあったはずだ。それさえも乗り越えられたのは、彼が昨年度まで在籍していた琉球ゴールデンキングスU15での経験と、やはり開志国際での日々だったと言う。

「琉球ではエースとしてプレーする中で『最後まで打ち続けなければいけない』という気持ちがありましたし、開志国際では、武藤さんやアンソニーさんという素晴らしい選手がいるので、ペイントエリア内ではなく、アウトサイドでしっかり得点を取らなければいけないという気持ちを持つようになりました。そういう意味で、たとえ外していても打ち続けなければいけないと感じていました」

 その視点から試合の流れを変えた第 2 クォーターの平良の 3 ポイントシュートを振り返ると、彼のキャリアもさることながら、開志国際がチームとしてつかんだ流れだったとも言える。

 敗れた福岡第一の井手口コーチも「決めた平良くんが素晴らしい」と認めている。しかし、こうも言っている。
「あの場面はウチのガード陣が平良くんをうまく捕まえられなかったのが大きなミスだと思います。3 ポイントシュートを打たれるということは、ウチのディフェンスでは一番あってはならないことなので、それをあのように立て続けに何本もやられたということは、ミスどころではないと思っています」
 時間にすると第 2 クォーターの開始からわずか 3 分30秒である。その間に堅守速攻を掲げる福岡第一の「堅守」が綻びを見せたとき、平良はそれを見逃さず 4 本の 3 ポイントシュートを打ち切った。それが香川での悲劇を、東京での歓喜に変える勝負の分かれ目になった。

 悲劇の先に生まれた歓喜は、開志国際がチーム一丸になってつかんだものである。しかし、この戦いにはまだ続きがある。ウインターカップ2022は彼らの優勝で終幕となるが、大会は来年以降も続く。そこには2023年 1 月 4 日から始まる「2022年度 第 3 回 全国U15バスケットボール選手権大会 (Jr.ウインターカップ2022-23)」でプレーする、来年度の 1 年生もチームに加わってくるだろう。
 ウインターカップは、平良のような活きのよいルーキーをこれからも待っている。

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