ウインターカップ2022 第75回 全国高等学校バスケットボール選手権大会


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REPORT 現地レポート

【現地レポート⑯】誤算と懸念の先にある伸びしろ――長野・東海大学付属諏訪

2022年12月27日

 誤算と懸念が交差する結果になってしまった。

「SoftBank ウインターカップ2022 令和 4 年度 第75回全国高等学校バスケットボール選手権大会」の男子準々決勝。高校総体 2 位の開志国際 (新潟①) と東海大学付属諏訪 (長野) の試合は、91-57 で試合終了のブザーを響かせた。開志国際の勝利である。

「ゾーンオフェンスがうまくいかなかったのが誤算でした」
 敗れた東海大学付属諏訪のキャプテン、#5 石口直選手はそう振り返る。
「自分が『このオフェンスに入ろう』ってうまく指示ができず、自分の思い描いていたバスケットができませんでした。本番の怖さを思い知らされました」

 思い描いたバスケット――実はこの 2 校、高校総体の 3 回戦でも対戦している。そのときも東海大学付属諏訪は開志国際のゾーンディフェンスを攻略できず、また 3 ポイントシュートの精度も欠いた。それだけに夏以降はそれらの敗因を克服すべく練習を積み上げてきて、石口にも思い描くバスケットがはっきりとした像で見えていた。
 しかし練習と本番とでは異なる。開志国際もまた、高校総体のときからを練習を積み上げているのだ。当たり前とも思えるその怖さを石口は改めて思い知らされたのである。

 一方で、最悪のケースとして、この完敗を思い描いていた人もいる。東海大学付属諏訪を率いる入野貴幸コーチである。
「普段から東海大学付属諏訪のバスケットは『ディフェンスからだ』と言っていても、昨日までの 3 試合も、自分たちの気の緩みからトランジションディフェンスが悪くなっているんです。またオフェンスがうまくいったらディフェンスもやり始めるといった場面も多々あって、そうした結果として表面化しなかったところを私のなかで警戒していました。だからといって試合前にそうしたネガティブなことを口にすると、選手たちのメンタル的にもよくないと考えて、言いませんでした。それがこの試合で思い切り表面化してしまったことは残念です」
 ディフェンスこそが東海大学付属諏訪である。就任から18年、そのようにチームを築き上げてきた入野コーチは、どこかでチームの根幹が希薄になっていたことを敗因と見ている。

 むろん夏からの成長が見られなかったわけではない。
「一人ひとりがリバウンドに飛び込んだり、ディフェンスでの役割を頑張るといった、自分の仕事を徹底できるようになったと、この試合を通して感じました」
 石口がそう言えば、入野コーチはオフェンス面での成長を説く。
「これまではオフェンスがうまくいかないと、プチンと音が聞こえるくらいに自分たちのオフェンスの形が崩れていたんですけど、夏以降に取り組んできたボールをきちんと動かして打つだとか、クローズアウトゲームはできるようになっていました」

 コートとベンチ。選手とコーチ。片やオフェンスに敗因を見て、片やディフェンスにそれを見る。ディフェンスに手ごたえを感じる選手がいて、オフェンスの進歩に頷くコーチがいる。同じチームにいても、異なる視座で試合を見ると、そうした敗因と成長の不一致は起こりうるのかもしれない。
 それでもやはり彼らは間違いなく成長している。この試合の勝利に足るべきそれは得られなかったが、それもまた彼らの伸びしろである。
「ダメだったところを自分で解決できないところは、夏から変わっていないなと思いました。でも一人ひとりが自分の課題に向き合っていくことで、これからも僕たちはレベルアップできると思います」
 石口がそう言えば、入野コーチはこう答える。
「泥臭く、必死にやるという東海大学付属諏訪らしさを積み上げられなかったことは残念ですが、昨年、一昨年がコロナ禍だったこと考えると、今年の 3 年生は歴史に残るだけの礎を築いてくれましたし、次の子たちへのバトンもうまく渡してくれたと思います」

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