ウインターカップ2022 第75回 全国高等学校バスケットボール選手権大会


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REPORT 現地レポート

【現地レポート⑨】桜花学園のエース横山智那美の恩師への思い

2022年12月25日

「優勝して、最後は井上先生に金メダルを掛けられるようにしたいです」

 大会開幕前、桜花学園の 4 番を背負うエース・横山智那美はそう語った。だが無念にも、その願いをかなえることはできなかった。

「SoftBank ウインターカップ2022令和 4 年度 第75回全国高等学校バスケットボール選手権大会」の女子 3 回戦。大会 4 連覇を狙った桜花学園 (愛知①) は、インターハイ 3 位の東海大学付属福岡 (福岡①) の前に 63–64 で敗れた。

 試合は終始ロースコアで、息詰まる大接戦。相手の大黒柱 #34 ファール アミナタの高さ (197cm) に苦しんで得点が伸びない桜花学園は、残り 1 分を切って 2 点ビハインドと苦しい展開だったが、横山からのアシストで #15 福王伶奈がバスケットカウントを決めて逆転し、さらに残り 9.9 秒、横山がダブルクラッチでフリースローを獲得。これで #34 アミナタを退場に追いやり、63–60 と価値あるリードを奪う。

 しかし、最後に悪夢が待っていた。残り 3.3 秒、相手に 3 ポイントシュートでのバスケットカウント、すなわち 4 点プレーを許してまさかの逆転を許す。最後のオフェンス、横山にパスが渡るがこれをうまくシュートにつなげることができず、63–64 で無情にも試合終了のブザー。インターハイ同様に、“ 鬼門 ” の 3 回戦を惜しくも突破することはできなかった。

 悔しさに涙が止まらなかった横山。気丈にも試合後の囲み取材ではしっかりと言葉を紡ごうとしていたが、たびたび悔しさが込み上げて言葉を詰まらせた。その中で語っていたのは「井上 (眞一) 先生の期待に応えられずに申し訳ない」という自責の念だ。

 エースと恩師は、堅い信頼関係で結ばれていた。井上コーチは昨年から、当時 2 年生でスターターに抜擢した横山のことを「課題は 3 ポイントシュートくらいで、それ以外はオフェンスもディフェンスも良い」と絶賛。最上級生になった今年はキャプテンに就任したが、横山は「中学生のときに井上先生に声をかけていただいたところから始まり、 3 年間でキャプテンを任せてもらえるまでに成長できました」と大きな感謝を感じていた。

 今年、井上コーチが体調不良でしばらくチームを離れていた時期も、横山は「井上先生には自分のことに専念してほしかったので、なるべく今はバスケのことから離れてもらいました」と恩師に心配をかけまいと振る舞ってきたと言う。ただ、時には自ら電話をかけるなどしてコミュニケーションを取り、離れていても「井上先生から伝わる気持ちもあったし、自分が井上先生に話す言葉で自分自身を奮い立たせてずっと頑張ってきました」

 この秋には井上コーチが戻ってきて、迎えたウインターカップは 3 年間の集大成を披露する場。「恩返しの気持ちでチームを勝たせたい」と話していただけに、自身の活躍に問わずチームが勝てなければ「自分のせいで負けました」と自らを責める。

 それでも、横山のバスケットはここで終わりではなく、これからも続いていく。今大会の前には、アーリーエントリーでトヨタ自動車 アンテロープスに入団することが発表された。「この負けについて、もっと時間をかけて考えていこうと思います」と言葉を絞り出した彼女は、必ずやこの経験を糧とし、さらに上のステージで周りの人たちへ恩返ししていくに違いない。

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