ウインターカップ2022 第75回 全国高等学校バスケットボール選手権大会


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【現地レポート⑦】ケガから復活したエースガードのラストショット――九州学院#11白石亮平

2022年12月24日

 残り時間は10秒を切り、63-66の 3 点差の場面。最後のシュートを託されたのは、大ケガから復活したエースガードだった――。

「SoftBank ウインターカップ2022令和 4 年度 第75回全国高等学校バスケットボール選手権大会」の大会 2 日目。男子 1 回戦で、九州学院 (熊本) は正智深谷 (埼玉) と対戦した。

 両チームは 3 年前の夏や 2 年前の冬にも全国大会で対戦。現 3 年生が 当時 1 年生だった 2 年前のウインターカップでは、ベスト 8 を懸けて大接戦を演じ、正智深谷が 81–76 で勝利した。また、今年 3 月に行われた全国高等学校交歓京都大会では、出だしから快調に 3 ポイントシュートを沈めた正智深谷が 119 – 62 で快勝している。つまり九州学院にとっては、因縁の相手へのリベンジを期す戦いとなった。

 今年のインターハイでは開志国際 (新潟) に敗れて 2 回戦敗退だった九州学院だが、このウインターカップに向けて好材料もあった。その一つが、 5 月から半月板損傷のケガで長く戦線を離れていた #11 白石亮平の復帰だ。田中洋平コーチからの信頼も厚く、 1 年生の頃からスタメンを張ってきた攻撃型ガード。 2 年前のウインターカップ正智深谷戦では 3 得点に終わった苦い過去もあり、「1 年生のときの悔しい思いや、ケガで今年のインターハイに出られずみんなに迷惑をかけた分、この冬は絶対にチームを勝たせたい」(白石選手) と並々ならぬ思いで今大会に挑んでいた。

 ただ、今大会に懸ける思いを持っているのは正智深谷も同じだった。昨年の冬、ガードの #11 菊田隼利が前十字じん帯を断裂。また、今年のインターハイは新型コロナウイルスの影響でやむなく出場辞退となり涙をのんだ。菊田がこの秋の「U18日清食品トップリーグ」で戦線に復帰し、メンバーをそろえて盤石の体制を整え、夏の無念を晴らすべく今大会に臨んでいたのだ。

 試合は序盤から互いに譲らぬ白熱の展開となり、前半を終えて 30–30 の同点。九州学院は #4 稲葉一義が前半で 4 ファウルと苦しい展開だったが、白石が奮起し、前半だけで 3 ポイントシュート 3 本を含む17得点を挙げてチームをけん引する。

 後半に入っても大接戦が続いた。ただ、流れが傾いたのは第 3 クォーター終盤。体を張ってオフェンスリバウンドに飛び込んだ正智深谷がリードを広げ、第 4 クォーター中盤には 8 点リードに成功して勝利を大きく引き寄せる。その後、追い掛ける九州学院は白石の 3 ポイントシュートや稲葉のドライブ、#7 後藤のリバウンドシュートなどで反撃。試合終了間際には 3 点差まで詰め寄り、最後のオフェンスでは白石にボールが託された。しかし、最後の 3 ポイントシュートは無情にもリングに弾かれる。残り 1.1 秒で正智深谷ボールとなり、そのままスローインを成功させた正智深谷が 66–63 で逃げ切った。

 試合後、「エースとして絶対に決めてやるという気持ちで打ったのですが、決められずにみんなに申し訳ないし、情けないです」と涙で目を赤くした白石。因縁の相手をまたしても越えられず、「1 年生の頃からの成長を見せたかったのですが、最後に 3 点届かなかったというのは自分の実力不足だと思います。後半のはじめもみんながパスを回しているのに 4 本くらい連続で外してしまって…。そこで流れを相手に渡してしまったので、自分の責任です」とうなだれる。

 とはいえ、白石はゲームハイとなる23得点を挙げ、長いブランクを感じさせない活躍を見せたことは確か。田中コーチもチームメートも、最後のシュートを彼に託したことに何の後悔もないだろう。

 田中コーチは「この試合だけに焦点を当てて準備をしてきて、第 3 クォーター終盤まで重い展開でうちのペースだったと思うのですが…。ちょっとしたターンオーバーが勝敗を分けたと思います。ただ、選手たちはよく頑張りました。接戦を勝ち切れなかったというのは、すべて監督の私の責任です」と選手たちを称賛。

 卒業後もバスケットを続けるという白石は、「次にああいう場面が来たら絶対に決められるように。技術のことももちろんですが、メンタル面も強くしたいです」とさらなる成長を誓っていた。

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