ウインターカップ2022 第75回 全国高等学校バスケットボール選手権大会


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REPORT 現地レポート

【現地レポート②】信じ、貫いたからこそ──広島・清水ヶ丘

2022年12月23日

初めてのウインターカップを、彼女たちは文字どおり “ 熱冬 ” にしてみせた。
「SoftBank ウインターカップ2022 令和 4 年度 第75回全国高等学校バスケットボール選手権大会」の 1 日目、女子 1 回戦。
大会初出場の清水ヶ丘 (広島) は県立足羽 (福井) と対戦し、60‐113で敗れた。
完敗だったが、彼女たちの表情はどこか爽やかでもあった。自分たちのバスケットを貫いたからである。

大会の規定によるとベンチ入りできる選手は「15名まで」とある。公式プログラムを見ても、参加する男女120チームのうち119チームはその枠をいっぱいに埋めている。ブランク(空欄)がない。
しかし唯一、清水ヶ丘だけはロスターリストに 6 つのブランクがある。彼女たちは 9 人でウインターカップを戦ったのである。

しかも 9 人のうち、2 人はマネージャーとして部に入ってきていた。今大会は選手登録をしてベンチに入っているが、プレーが彼女たちの “ 本職 ” ではない。“ 本職 ” の 7 人も、うち 1 人は大会前に左足を負傷。ベンチ入りこそしているものの、今大会への出場はかなわなかった。つまり実質的に稼働できる選手は 6 人のチームだったというわけだ。

それでも広島県予選で決勝戦まで進出し、中国ブロック大会で広島皆実が優勝していたことを受けて、今大会の出場権を得た。その理由を就任11年目の小原健太コーチが言う。
「選手たちはみんな地元の子たちで、スタメンの 5 人はみんな顔見知りなんです」
中学生のころから見知っている仲だからこそのチームワーク。その結束がチームをウインターカップに導いた。

もちろんそれだけで勝てるほど高校バスケットはあまくない。プレー面では徹底的に 3 ポイントシュートを磨き上げた。
県内を含め、強豪校には高さがある。同じバスケットをしていては勝てない。そう考えた小原コーチは就任以来、いやもっと前から 3 ポイントシュートに活路を見出していた。

小原コーチは1980年生まれの、いわゆる「田臥 (勇太・現宇都宮ブレックス)世代」である。高校時代には県立能代工業 (現県立能代科学技術) に遠征し、田臥たちと対戦している。
ファストブレイクから 3 ポイントシュート。ドライブ、キックアウトから 3 ポイントシュート。
目の当たりにした当時の県立能代工業のオフェンスが、今の清水ヶ丘のバスケットの原点にある。実際、彼女たちも隙さえあれば積極的に 3 ポイントシュートを狙い、それを守りに出てくればカウンターで抜いていく。
ボールを持たせないように守ってくればバックカット。
女子バスケットボール日本代表が東京2020オリンピックで見せたバスケットとも言えるが、彼女たちも以前からそれを目標に掲げ、実行していたのである。それが今年度、チームワークと相まって、花開いた。

全国大会初出場・初勝利はならなかったが、3 ポイントシュート 3 本を含むチームトップの18得点をあげた #9 住吉舞花選手は言う。
「初出場ということで最初は緊張しましたが、途中からは相手に飲み込まれることなく、清水ヶ丘のバスケットができたので、それはよかったです」

県立足羽のフィジカルコンタクトの強さが、徐々に清水ヶ丘の脚力を奪っていった側面もある。それが 3 ポイントシュートの精度を上げられなかったひとつの要因だろう。ただ、シュートは打たない限り入らない。住吉選手は13本の 3 ポイントシュートを、その成否は別として、打ち切っている。
「リバウンドを取ってくれると信じて、最後まで打つことができてよかったです」
練習してきたはずのリバウンドは取れず、それが失点につながってしまうのだが、今大会 “ 最少 ” のチームは自分たちのやってきたことを最後まで信じ続けた。試合後にどこか爽やかな表情だったのはそのせいかもしれない。

敗れたのだから悔いがないわけではない。しかし最後まで自分たちのバスケットを信じて、貫いたことは、結果以上に彼女たちの大きな財産になる。
「3 年間、人数は少なかったけど、清水ヶ丘でバスケットができて楽しかったです」
最後に見せた住吉選手の笑顔は、やはり爽やかだった。

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